大阪地方裁判所 平成元年(ヨ)2065号 決定 1990年5月08日
申請人 佐藤誠
右代理人弁護士 関戸一考
同 正木みどり
同 出田健一
同 松本七哉
同 寺田太
被申請人 井谷運輸産業株式会社
右代表者代表取締役 井谷斉
右代理人弁護士 鷹取重信
同 山崎武徳
主文
一 申請人が被申請人に対し労働契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める。
二 被申請人は、申請人に対し、金三三〇万円及び平成二年五月以降本案の第一審判決言渡しに至るまで毎月一五日限り、月額金三三万円の割合による金員を仮に支払え。
三 申請人のその余の申請は、これを却下する。
四 申請費用は被申請人の負担とする。
理由
第一申請
無期限で平成元年七月以降月額金五六万八七九〇円の仮払いを求めるほか、主文一、二項と同旨
第二事案の概要及び争点
一 争いのない事実
1 被申請人は、小口貨物の運送を目的とする会社であり、申請人は、昭和五三年三月二三日被申請人会社に通常の労働契約を締結して入社し、いわゆる「従業員運転者」として働いていたが、昭和六二年五月二〇日付で退職願いを出し、一旦退社した。
2 申請人は、右退社に際して被申請人会社から「従業員運転者」より収入が高額になる「償却」という制度がある旨説明を受け、一か月後の同年六月二一日、改めて右「償却」制度に基づきいわゆる「受け取り」の者として働く趣旨で、被申請人会社と「運送契約書」と題する書面による契約(以下、「本件契約」という。)を締結し、働いてきた。
3 被申請人は申請人に対し、平成元年六月一七日付の内容証明郵便により、同月二〇日をもって「本件契約」を「解約告知」する旨通告し、同月二一日以降申請人の就労を拒否している。
4 申請人は、「受け取り」の者も労働法上の労働者であり、本件契約には期間の定めはないから、本件「解約告知」は実質的には解雇の意思表示にあたり、解雇には正当な事由が必要であるところ、本件においては全くそのような事由はないから、解雇権の濫用もしくは不当労働行為により無効であると主張して本件仮処分申請に及んだ。
二 争点
1 「本件契約」の実態から、申請人に「労働者性」が認められるか。
2 本件「解約告知」の効力。
第三争点に対する判断
(以下の一応認定した事実は、本件疎明資料及び審尋の経過を総合したものであるが、事実認定との結びつきを明確にするため特に個別に掲げた疎明資料もある。)
一 争点1(申請人の「労働者性」)について
1 申請人と被申請人会社との関係
申請人が契約していた「償却」制度とは、被申請人会社が所有し営業免許の許可を受けた車両を、「受け取り」の者が「購入」したという形式(名義は代金完済後も会社のままであるし、現実に「受け取り」の者が当該車両を会社との契約上の仕事に使用することをやめた後に引き取った事例があったとの疎明はない。)をとり、同人に同車を専属的に使用させて運送業務にあたらせ、水揚げ金額に応じた全額歩合制の報酬から車両の購入代金や自動車税その他の経費を差し引いて支給し、自動車の燃料等の運行諸費用、点検・修理等自動車に要する経費等も同人に自己負担させるという概要のものであった。
2 申請人の労働の実態
(一) 申請人の仕事内容は、四トンの貨物自動車で主に塗料・染料・菓子類・薬品等を被申請人会社の指定どおり配達、集荷することで、配達地域を会社内の一〇の配送地域のうちの京都コース(南区、右京区、西京区担当)と指定されていたが、このことは申請人が「従業員運転者」として働いていた時期から通して全く同じであった。
京都コースには合計五名の担当者がおり、申請人以外の四名は「従業員運転者」であり、五名はそれぞれ決まった地域を割り振られて担当していた。
(二) 申請人の一日は、毎朝六時頃に東大阪市水走所在の被申請人会社大阪営業所に出社し、前夜荷積みをしておいた自己使用車両に乗って出発し、京都に朝八時頃到着して午前中に配達を完了し、午後に予め会社から指定された集荷先(申請人はフジケミ近畿、日亜ペイント、ヘンケル白水の三か所)で集荷し、大阪営業所に戻り荷物をおろし、翌日配達分の荷物の伝票を渡されて宵積みをし、荷物を積込み終えるのは午後九時頃でその後帰宅するという毎日であった。このことも「従業員運転者」時代と全く変わらず、また京都コースの申請人以外の四名の「従業員運転者」とほぼ同様であった。ただ、荷積みの際に四台しかないホームについては申請人には専用のホームが割り当てられ、優先的に使用できた。
(三) 作業の指示は「従業員運転者」と同様に配車係又は勝又次長からなされた。作業の段取り自体についての細かい指示はないが、前日の荷物を午前中に配送完了することが求められる仕事の性質上コース、担当地域によって仕事の手順は必然的に定まり、申請人の自由裁量の働く余地はほとんどなく、物理的に不可能な場合を除き諾否の自由もなかった。
右のようなスケジュールのため、申請人が、仕事中もしくは被申請人会社退社後、他から依頼を受けて自己使用車両を運転し運送に従事するなどして被申請人から支給される金員以外の収入を得る余地は全くなかった。
(四) 労働時間につき、「従業員運転者」のようなタイムカードによる管理はなされていないが、毎日の作業日報、タコグラフを会社に提出することを義務づけられ、万一事故を起こせば事故報告書の提出義務を課せられていたであろうことは「従業員運転者」と同様である。
申請人の車両には業務用の無線がなく、「従業員運転者」のような集荷完了時の連絡義務は課せられていなかったが、連絡の必要な場合は適宜の方法にて必ず会社と連絡を取っていた。
(五) 作業に際しては、「従業員運転者」と同じ会社名入りの制服の着用が義務づけられていた。
また、申請人が「購入した」とされている車両には会社名入りのカラーリングが施されており、申請人の自由なカラーリングは許されなかった。
(六) 労働日・休日は「従業員運転者」と全く同じであり、申請人が都合で休む場合は前もって被申請人会社に連絡することで足りた。申請人が会社から代行者の手配を命じられたことはなく、逆に申請人は自己以外の者をもって運送にあたらせることは許されないとの認識をもっていた。
3 申請人の報酬
(一) 会社から「受け取り」の者に支給される金員は、あらかじめ定められた率による配達歩合(直接配達分は売上の四五・五パーセント)と集荷歩合(契約当初一個当たり約三〇円でその後約二六円となる)の二本建ての全額歩合制であり、毎月二〇日締めで決定され、そのなかから申請人の場合は、「車両償却費」月額七万二二二三円及び「割賦支払利息」二万一六六七円(車両購入代金二六〇万円の三年間の元利均等分割払いとして)をはじめ、自動車税、自動車保険料等の費用、「一般管理費」(専用ホーム使用料。当初月額一万円を五万円に増額)の基本経費及び振込料を控除した残額が翌月一五日に申請人指定の口座に振込み支払われる仕組みであった。
(二) 申請人の収入は昭和六一年の一年間の税引前総収入が五二二万三二一〇円であったのに対し、昭和六三年の名目総支給額は九五六万四七二〇円となり「従業員運転者」時代の年収に比して確かに増加した。
ただし、右の額から振込み支給前に会社から差し引かれた経費合計一九九万一〇八一円(車両償却費八六万六六七六円、割賦支払利息二六万〇〇〇四円、自動車税・自動車保険料等計四三万七〇二一円、一般管理費四〇万円、其の他経費二万七三八〇円)及び自己負担の経費合計約一七八万五三四〇円(燃料費八五万二〇〇〇円×12/11、修理・車検費三七万七〇三五円×12/11、高速代一万八四〇〇円×12/11、タイヤ・部品代三八万九一三〇円×12/11の合計)を差し引くと五七八万八二九九円となり、さらにこれから(被申請人会社によれば必ずしも支払うべき費用ではなかったようであるが、その点は一応おく。)申請人がアルバイトに自発的に支払っていたと主張する経費約四三万六三六〇円(四〇万円×12/11)を差し引けば、結局申請人としては比較対象たる税引前総収入は五三五万一九三九円ということになり、ベースアップ幅を考慮し、更には事故等による危険を負担することや退職金制度もないことをも考慮すると、「従業員運転者」時代と格段の開きはみられなかった(もっとも、車両償却費年間八六万六六七六円、割賦支払利息年間二六万〇〇〇四円の控除は三年間で終了するから、四年目からはこの分の増額が「受け取り」のうまみとして見込まれていたことも一応認められる)。
(三) なお、前述の運賃料率の減額(一個あたりの集荷歩合約三〇円を約二六円に切り下げ、申請人の当時の月収にして約一万数千円ほど下がることになったもの)及び経費の増額(専用ホーム使用料として一般管理費の名目で月額一万円差し引いていたものを五万円に切り上げたもの)は、この間の昭和六三年六月に行われた。
4 「受け取り」の者と「従業員運転者」との差異
本件契約は書面上請負契約的形式をとっており、申請人には「従業員運転者」と異なりタイムカードによる管理はなされず、荷物を宵積みした自己使用車両に乗って帰宅して翌朝出社せず直接配達先に向かうことも許されていたこと、報酬についてもその算出システム(「受け取り」の者は「従業員運転者」のような基本給・残業手当その他の諸手当・賞与等の支給を受けず、退職金の制度もない。)、支払い時期・方法(当月二〇日締めの分を「従業員運転者」は当月末現金支給。「受け取り」の者は翌月一五日指定口座振込払い)、また企業内の福利厚生面(特に健康保険・厚生年金保険・雇用保険等に「受け取り」の者は加入していない。)でも「従業員運転者」と異なった扱いを受けていたことが一応認められる。
(なお、企業内の組合にも「受け取り」の者は入れないとされ、明確に区別された扱いを受けていた。)
しかし、結局のところは「受け取り」の者と「従業員運転者」との主たる相違は報酬の算出システムにあり、ことに「受け取り」の者の側の意識としては、単に自己がその使用車両の償却費・税金・燃料その他の車に関する経費・危険を負担するかわりに全額出来高払いで「従業員運転者」よりも高額の収入が見込めるということに尽きるといえるが、現実には(特に未だ車両償却期間中である場合は)報酬面でも格段の差異はなかったことが一応認められる。
5 申請人の労働者性についての判断
「労働者性」の判断基準は使用者との実質的使用従属関係の有無に求められるところ、以上認定の事実によれば、結局、被申請人会社は申請人を労働時間中拘束してその指揮監督下においており、申請人と被申請人会社との間には実質的な使用従属関係があったと考えるのが相当であり、申請人の労働者性は優に認められる。両者の間には労働契約関係が成立していたものというべきであって、本件契約が被申請人主張のごとき単なる請負契約とはいえない。
二 争点2(本件「解約告知」の効力)について
1 本件「解約告知」及びその前後の経緯
(一) 昭和六三年六月、「受け取り」者に対し、集荷歩合の単価切り下げと専用ホーム使用料の切り上げが行われた件につき、申請人が抗議したところ、被申請人会社は、会社の方針にあわない人はやめてもらっていいとの態度であり、不満と不安を募らせた申請人は、被申請人会社に対し、毎月支給される報酬を決定する基となる得意先から受け取る運賃の明細についても問い合わせたが、明らかにはされなかった。
「受け取り」者は従来の被申請人会社の企業内組合には入れなかったため、右の件の他「従業員運転者」も「受け取り」者も早朝から午後九時ころまでにわたる長時間労働がなされていたことなどを含め、待遇の改善と安定を求めて申請人が中心となり、非公然で新組合の結成・加入を訴えた。
(二) 平成元年六月上旬ころ、申請人は、同人の新組合結成の働きかけを知った被申請人会社の岩田大阪営業所長に呼ばれ、勝又次長同席のうえ、翻意するか会社をやめるよう迫られ、「集荷歩合の単価を切り下げ前の数字にもどしてくれるなら組合はやらない。」と返答し、会社側も一応検討するとのやりとりがあったが、結局集荷歩合の単価は元に戻らなかった。
(三) 平成元年六月一一日、申請人らが中心となって「受け取り」の者及び「従業員運転者」計七名で新組合(全日本運輸一般労働組合中央支部井谷運輸産業分会。以下、「分会」ともいう。)を結成し、翌一二日に被申請人会社に結成を通知し、集荷歩合の単価を切り下げ前の数字に、また専用ホーム使用料を切り上げ前の数字にそれぞれ戻してほしいことその他の報酬面、労働条件面等での要求事項につき同月一七日午後七時よりの期日で団体交渉を申し入れた。申請人は、分会結成時より分会長に就任し、会社への結成通知も申請人と組合の中央支部副委員長との二名で行うなど中心的役割を果たしており、結成通知書に名前を出した分会員のうち分会長(申請人)、書記長、会計の三名は「受け取り」の労働契約の者であった。
(四) このような動きの中で岩田大阪営業所長は、「受け取りの者はクビにしてやる。」と発言し、日程調整がつかないと団交申し入れに応じないまま、同月一九日、突然申請人に対し、翌二〇日付をもって同人との契約関係を終了させること、その旨の内容証明郵便を既に同人の自宅宛郵送していると告げ、そのころ会社から申請人に対する同月一七日付の「解約告知」と題する内容証明郵便が届いた。
(五) なお、分会長である申請人に対する右「解約告知」後、組合の分会書記長で、「受け取り」の者である大段文男において、申請人にかわり公然と活動し、分会の中心的役割を果たしていたところ、被申請人会社は右大段に対しても平成元年七月二一日付の「請負契約予告通知」と題する内容証明郵便をもって、同人の契約を同年一〇月二〇日をもって終了させる旨の意思表示を行った。
その後残る一名の「受け取り」者の分会員である会計の中村正道及び「従業員運転者」二名は分会を脱退し、現在はその余の二名の「従業員運転者」のみが残された分会員として被申請人会社において働いている。
2 期間の定めの有無とその解釈
(一) 本件契約書<証拠>第七条によれば、本件契約には一年の期間の定めがあるかのごとき記載があり、右の事実を前提とすれば、本件「解約告知」は昭和六三年六月に一度更新された本件契約の期間満了に伴う傭止めと解される余地もある。
(二) しかし、前認定のとおり「受け取り」者と「従業員運転者」とでは、その従事する仕事内容自体は同一で臨時的性格はないこと、両者の差異は主として報酬の算出システムにあるといえるが前記一3(二)の試算では申請人の場合車両償却後に初めて「受け取り」の実質的うまみが享受できる仕組みであったとさえいえるところ、申請人の「購入」した車代金二六〇万円は償却期間三年の均等分割払とされており、毎月の報酬から「車両償却費」として七万二二二三円、「割賦支払利息」として二万一六六七円の合計額である九万三八九〇円を三六か月間控除された後にようやくこの額についての「受け取り」制度のうまみが享受できる仕組みになっているが、本件「解約告知」時点では未だ二か年しか経過していないこと、また現実の運用としても契約書の文言に「双方より何等かの申出なき時は更に一ケ年延長する」と記載されているように、申請人はもちろん他の「受け取り」者についても期間満了の都度直ちに新契約締結の手続をとるのではなく、逆に何らの手続なしに原則として反復更新する運用がされてきたことが一応認められることから考えれば、本件契約書上の期間の定めにもかかわらず、労使双方がともに期間満了時に労働契約が終了すべきことを予定していたとは認めがたく、むしろ、被申請人会社としては、特段の事情のない限り労働契約を更新することを予定し、申請人としてもまた引き続き働けることを期待していたものであって、実質においては、当事者双方とも、期間の定めは一応あるが、いずれからか格別の意思表示のないかぎり当然更新されるべきものと考えており、このような考えのもとに本件労働契約関係は締結され、存続されてきたものというべきである。
(三) 以上から、右のような本件契約を終了させる趣旨のもとにされた本件「解約告知」による期間更新拒絶の意思表示は、実質において解雇の意思表示にあたると解されるから、その効力の判断にあたっては、その実質に鑑み解雇の法理を類推すべきである。
3 本件「解約告知」の効力についての判断
(一) ところで、被申請人会社が、本件契約の更新を拒絶した理由としてあげるものは、被申請人会社により昭和六三年六月になされた「受け取り」者に対する集荷歩合の切り下げと専用ホーム使用料の月額一万円から五万円への切り上げにつき、申請人が、従前の条件に改定するよう求めて被申請人会社と折り合いがつかなかったということのみである。
しかし、申請人が被申請人会社に対し労働条件等の改善を求める申し入れをなすこと自体は、労働者である申請人の立場からは当然の行為であるし、前記二1認定の事実によれば、申請人のなした集荷歩合の単価や専用ホーム使用料等についての申し入れがその態様において特に問題とされるべきものであったとも疎明されないから、右の申し入れがあったことのみをもって解雇の理由とすることは到底なしえない。
(二) 以上、申請人と被申請人との間には労働契約が成立しており、期間の定めについては前記のとおり解されるので、本件「解約告知」の効力の判断にあたっては、解雇の法理を類推すべきであり、解雇には正当な事由が必要であるところ、被申請人の主張する期間更新拒絶理由は解雇の正当事由にはなりえないものであるから、本件「解約告知」は解雇権の濫用として、その余の点について判断するまでもなく無効なものというべきであり、申請人は依然として被申請人会社に対し労働契約上の権利を有する地位にあるものである。
三 保全の必要性
1 仮払いを命ずべき期限について
申請人が被申請人から支給される報酬を唯一の収入源として申請人及びその家族(専業主婦の妻、就学前の二児)の生計を営んできた労働者であることは明らかであり、本件「解約告知」により第一審の本案判決の言渡に至るまで被申請人会社の労働者として扱われず、右報酬が受けられないとすれば、その生活に著しい支障を来たし、申請人に回復しがたい損害を生ずるおそれがあるものと考えられる。しかし申請人が第一審の本案判決の言渡時以降に及んで金員の仮払いを求める部分は、申請人が本案の第一審において勝訴すれば仮執行の宣言を得ることによって右と同一の目的を達することができるので右申請部分については必要性を欠く。
2 仮払いを命ずべき金額について
申請人が本件「解約告知」直前三か月間(<証拠>)の平均賃金と主張する金五六万八七九〇円のうち、一か月約一八万五〇〇〇円余が燃料費その他申請人の自己負担の経費に当てられていたことは申請人の自認するところであり、更に申請人が本件「解約告知」後不定期とはいえアルバイトによる幾分かの報酬を得てきたことも一応認められる。他方、被申請人会社が申請人の平成元年六月分の報酬(六月二〇日締め七月一五日払い)を自動車の残代金と相殺したと主張して申請人に対し支払わないことや、申請人が現在本件「解約告知」に起因する借金等の返済に追われていることその他本件疎明に現れた一切の事情を総合すれば、金三三〇万円及び平成二年五月以降本案の第一審判決言渡しに至るまで毎月一五日限り、月額金三三万円の割合による金員をもって現在の危険の回避に必要な仮払い額と認めるのが相当である。
四 結論
以上の次第で、本件仮処分申請は、主文一、二項記載の限度で理由があるから、事案の性質上保証を立てさせないでこれを認容し、その余は理由がなくかつ保証をもって疎明に代えさせることも相当でないからこれを却下し、申請費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条但書を適用して、主文のとおり決定する。
(裁判官 水谷美穂子)